in 140 letters ...1

  

終電を降りて駅を出た。
ふと見上げれば空は晴れていて、「あれは何て星だっけ」などとぼんやり考えていた。
忙しい日々の中で、星の名前すら思い出せなくなっていく。
星座はバラバラの光の点になっていく。
そうだ、アルタイルだ、と。
私は消えた星座を結ぼうと、小さな光をかき集める。
――「消える星座」
  
    


入学式の朝、鏡の前で制服のリボンを結ぶ。
うまく結べない。
「大体、リボンなんて所詮結び目でしょ。なんでこんな目立たせないといけないのよ」
私は鏡に向かって悪態をつく。
ところがリボンというのは1本の紐で、どこにも結びつかない。
入学式だって?
私は鏡の中の自分に吐き捨てた。
――「鏡とリボン」
   
   

「ようこそ地球へ。何しろ239万光年だ。アウストラロピテクスが月に行っちまうくらいの時間、はるばる旅してきたんだな。何かお礼が言いたいが、俺の言葉が届くよりも、俺の子孫がお前に会いに行く方が早いかもしれない。ともかく長い旅だったんだ、ゆっくり休んでくれ」
――「アンドロメダ」
   
   


「これしかないよ」と古風な渦巻き状の蚊取り線香を差し出されて、正直僕は参った。
煙たいし臭いし、もっとこう、ノーマット的なものがよかった。
この手の蚊取り線香で僕が思い出すのは、実家の庭の夏草の匂いや、気の早い秋の虫の声で、
過ぎていったいくつもの夏に、居場所をなくしてしまうのだ。
――「蚊取り線香」
   
   

いつまでふさぎ込んでいるのだと、友人は私を叱咤した。
「彼のことは忘れて、笑えっていうの」
喪失は霞む。失ったことを忘れて笑うことの恐ろしさは、時に失うことそれ自体よりも大きい。
「あいつがいたときは、よく笑ってたじゃない」
彼女は言う。喪失は霞むが、存在した事実は消えない、と。
――「霞み行く喪失」
   

Twitterでお題を募集して書かせて頂いたものから。
2013/4/27 〜 2013/6/12 

(C) 2013 Kurage (Sasaki Kaigetsu)
  
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