in 140 letters ...2

  

雨の色はと聞かれれば、青だと答える。
その時私が思い浮かべるのは、紫陽花の青だった。
よく晴れた朝、水たまりには茶色く腐った花びらが揺れていて、長い梅雨の終わりを感じてどこか切なかった。そしてその感情もまた、青い色をしていた。紫陽花の、最も美しく咲いているときの青だった。
――『紫陽花』
  
    


熱帯雨林では、うかつにそこら辺の植物に触れてはいけないという。
痛い、と思ったときには遅かった。
観光気分の異邦人を拒むように、そのトゲは深々と僕の腕に刺さっていた。
長い年月そこにあり続けるその森は、
ある種の厳しさと強さとをもって、僕を迎え入れた。
――『トゲ』
   
   

オムライス限界について考えていた。
つまり卵によって覆われる率がそれを規定するという前提で。
オムレツが乗ったチキンライスをオムライスと呼び、最終的には自分でオムレツを崩して覆うように求められる事例も報告されているので、覆うタイミングについては寛容であるらしい。
――『オムライス』
   
   


シャーロック・ホームズは童話だと思っていた。
わりと今も思っている。
小学生の頃に出会ったからだろう。
小遣いで買った本の中ではかなりの古株だったりする。
今もあの世界の中に行くことで、ある種の透明な感情に触れる感覚はあるが、
それは、子供の自分が作っておいてくれた場所なのだと思う。
――『童話』
   
   

「新しい情と響きは見つかったか」彼は問う。
「そう簡単に見つかるものか」僕は答える。
それはこの海を越え旅をしたところで見つかる保証はない。
「『情』は言葉によって定義されると思うか」彼は問う。
「さあね。言葉で定義された情を破り捨てる言葉があれば、
きっとそれが僕の求めるものだろう」
――『情』
   

Twitterでお題を募集して書かせて頂いたものから。
(C) 2013-2016 Kurage (Sasaki Kaigetsu)
  
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