メシアン 鳥のカタログ Catalogue d'oiseaux


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 まず、この曲の概要を簡単に記しておきます。作曲は1956年の9月から10月に
かけてで、モデルになった鳥たちと初演の演奏者であるピアニストのイヴォンヌ・ロリ
オに献呈されています。
 フランスの各地方に生息する鳥の名を標題にした、様々な長さの13の曲(全7巻)
からなる作品で、連作のような形を取っています。演奏時間は合計すると2時間半に及
ぶ長大な作品です。それぞれの曲の標題は次の通りです。

	第1巻	 第1番		キバシガラス
		 第2番		キガシラコウライウグイス
		 第3番		イソヒヨドリ
	第2巻	 第4番		カオグロヒタキ
	第3巻	 第5番		モリフクロウ
		 第6番		モリヒバリ
	第4巻	 第7番		ヨーロッパヨシキリ
	第5巻	 第8番		ヒメコウテンシ
		 第9番		ヨーロッパウグイス
	第6巻	第10番		コシジロイソヒヨドリ
	第7巻	第11番		ノスリ
		第12番		クロサバクヒタキ
		第13番		ダイシャクシギ

 これらのいずれの曲も、標題になっている鳥、およびそれと同じ土地に生息する鳥た
ち(計77種)の歌が、取り巻く空間とともに音楽化されています。各曲には序文が付
されており、その中には標題となっている鳥のかなり詳しい解説があります。鳥の生態
のみならず、生息地の風景や同じ曲に登場する他の鳥についての説明もあります。まさ
しく「鳥のカタログ」なのです。
 さて、先に私はこの曲について、鳥の歌の音楽化というようなことを述べましたが、
メシアン自身の独特の手法による叙景音楽と言ってもまず間違いではないと思います。
曲中の素材はすべて自然の中にある様々な音や動きを時間の流れを追って描写(この語
は不適切かもしれません)したものです。メシアンは、これまでの幾多の音楽家のよう
に、鳥の声を「人間化」して、美しいメロディーに仕上げたわけではありません。だか
らこの曲は、(一般的な意味では)決して耳に優しい音楽ではないかもしれません。む
しろ、鋭く衝撃的な音の連なりは、慣れないと不快感すら感じる人がいるかもしれませ
ん。また、私の持っている録音(ウゴルスキ演奏)のものでは、石田一志氏他の作成に
よる曲の詳細なプログラム(時系列に沿って表現されていることを解説したもの)が付
されていますが、正直言って、私にもこのプログラムがなければ、この曲の鑑賞はかな
り難しいと思います。これを読みながら、私は「鳥のカタログ」にはまってしまいまし
た。

 この曲の録音は、先述した次の1種のみ所有しています。

	ウゴルスキー(pf) DG POCG-1751/3 1993年3月〜11月ベルリン録音

 なお、このアルバムには、「ニワムシクイ(1970年作曲)」という単独曲も収録
されていますが、これは第2の「鳥のカタログ」へと発展するはずだったものの一部の
ようです。もしこれも完成していれば、さらに楽しみが増えたのに、と思い残念です。