メシアン 世の終わりのための四重奏曲(ヴァイオリン、クラリネット、チェロ、ピアノ)(1940)


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 現代フランスの最大の作曲家の一人であるオリヴィエ・メシアンは、第二次世界大戦の勃発とともに、一兵卒
として招集され、ドイツやベルギーとの国境近くのヴェルダンからナンシーに向かって敗走中にドイツ軍に捕ら
えられ、捕虜になりました。その後、ドイツのポーランド国境に近いシュレジェン地方のゲルリッツの捕虜収容
所に収容され、ここで終戦まですごすことになります。
 捕虜収容所ですから、ここでメシアンはすべての所持品を取り上げられました。しかし、たまたまその中にい
くつかのポケットスコア(バッハのブランデンブルク協奏曲やベルクの叙情組曲などがあったそうです)を見つ
けた音楽好きのドイツ将校がそれをメシアンに返却し、のちには作曲できるように紙や鉛筆などをも与えたそう
です。
 この収容所で、メシアンは3人の音楽家と出会います。チェロ奏者のバスキエ、ヴァイオン奏者のブーレール、
それにクラリネット奏者のアコカです。この「世の終わりのための四重奏曲」が、一風変わった楽器編成なのは、
この3人(それから自分自身のピアノ)のために書かれたものだからです。つまりこれら以外に使える楽器がな
かったというわけです。
 最初メシアンは、この3人のために小さな三重奏曲を書きました。これがのちに「世の終わりのための四重奏
曲」の第4楽章(間奏曲)になるのですが、これは収容所の洗面所で初演されたそうです。この演奏に勇気づけ
られたメシアンは、朝10時にならないと日が昇らないという冬の収容所内で作曲の筆を進め、1940年の終
わり頃に8楽章からなる四重奏曲を完成しました。初演は1941年1月15日、収容所内のバラックのホール
で、収容所の捕虜やドイツ軍の将校など5000人の徴収の前で行われました。

 この曲は先述のように8つの楽章からなっています。各標題の概要を次に記します。

	T 水晶の礼拝	vl,cl,vc,pf
	U 時の終わりを告げる御使いのためのヴォカリーズ  vl,cl,vc,pf
	V 鳥たちの深淵  cl
	W 間奏曲  vl,cl,vc
	X イエズスの永遠性への讃歌  vc,pf
	Y 7つのトランペットのための狂乱の踊り  vl,cl,vc,pf
	Z 時の終わりを告げる御使いのための虹の錯乱  vl,cl,vc,pf
	[ イエズスの不滅性への讃歌  vl,pf

 各楽章の標題を見ただけでも、いかにもメシアンらしさが現れていると思います。鳥とキリスト教への信仰は、
メシアンのキーワードのようなものだと思います。
 初演の時、メシアンはこの作品について、次のようなことを言っています。時の終わりのために書かれた作品
で、その時の終わりとは、世界の終わりではなく、これまでの過去から未来へと続く時の観念の終わりだそうで
す。私なりに解釈すると、やはり収容所という現実の超克という面があると思うのですが、どうでしょうか。
 メシアンはのちに様々なところでこの作品について解説しています。かなり難解な用語を使った哲学的な説明
で、ここで簡単に要約するのは困難ですが、いずれは詳細に分析してここに書いてみたいと思います。

 この曲の録音は、次の3つを所有しています。

  1 タッシ (pf)ピーター・ゼルキン,(vn)アイダ・カヴァフィアン
        (vc)フレッド・シェリー,(cl)リチャード・ストルツマン
    BMG 7835-2-RG 1975年12月録音

  2 (vn)ユゲット・フェルナンデス,(cl)ギイ・デュプル
    (vc)ジャック・ネイルス,(pf)マリー=マドレーヌ・プティ
    エラート 4509-91708-2 1967年2月パリ録音

  3 (vn)フェラ・ベス,(cl)ゲオルゲ・ピーターソン,(vc)アンナー・ビルスマ,(pf)ラインベルト・デ・レーウ
    フィリップス PHCP-9277 1977年10月オランダ録音

 私のおすすめは、1のタッシの演奏です。1970年代という演奏時期に関係したことを抜きにしても、その
美しさは群を抜いていると思います。