ラヴェル 亡き王女のためのパヴァーヌ


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 1899年、ラヴェルが24歳の時の作品で、当時のサロン
で大いに受けたそうです。ベラスケスの描いたスペインのマル
ガリータ王女の肖像画からインスピレーションを受けて作曲し
た、という逸話がありますが、どうもこれは作り話のようで、
単に語呂がよかったからこの題を付けたに過ぎないようです。

 パヴァーヌというのは、16世紀にスペインで流行したゆっ
たりしたテンポの典雅な2拍子の舞曲です。起源はイタリアら
しく、この「パヴァーヌ」という名前も北イタリアにある古都
パドヴァ(Padova 古名:パヴァ)にちなむもので、「パドヴァ
(パヴァ)風の踊り」という意味のようです。スペイン語の孔
雀(pavon) に由来するという説明もありますが、これは後世の
俗説のようです。 

 ベラスケスは、左にありますように、マルガリータ王女の肖
像画をその成長の途上に何枚か描いていますが、パリでラヴェ
ルが見た(とされる)のがどの絵なのかは分かりません。上か
ら2番目の絵は、構図がちょっと変わっていますが、鏡に映っ
たところを描いたものだそうです。そのため、絵を描いている
最中のベラスケス自身の姿もあります。なお、このベラスケス
の胸の赤い十字架は、スペインの由緒ある騎士団の紋章で、ベ
ラスケスの死後その功績をたたえて、国王フェリペ4世自身が
書き加えたものだそうです。

 実を言うと、私はこれまでにこの曲を目的としてLPやCD
を買ったことは一度もありません。他の何かの曲を聴きたくて
買ったら結果としてカップリングされていた、というのが実際
のところです。それでも長い年月の間に下記のように、11種類
もの録音がたまってしまいました。これはこの曲がリリースす
る側にとってもいろいろな意味でカップリングに都合のよい曲
である、ということなのだと思います。

 この曲は本来ピアノ曲ですが、ラヴェル自身によるオーケス
トラ編曲があり、むしろこちらの方がよく演奏されているかも
しれません。また、様々な楽器にも編曲されています。曲は三
部形式でまとめられています。冒頭の(オーケストラ版の場合)
ホルンで現れる甘美な旋律が極めて印象的です。

 この曲の録音は、以下のとおり、結構持っています。

 1 パイヤール/パイヤール室内管弦楽団
   RCA BVCC-9366 1993年2月パリ録音

 2 アンサンブル・ウィーン=ベルリン DG POCG-7149
   1989年8月オーストリア録音

 3 マリナー/セント・マーチン・イン・ザ・フィールズ
   フィリップス 412 131-2(輸入盤)
   1983年8月ロンドン録音

 4 クリュイタンス/パリ音楽院管弦楽団
   セブン・シーズ K32Y184(モノラル)
   1964年5月東京文化会館録音

 5 小澤征爾/ボストン交響楽団
   DG 437 392-2(輸入盤)
   1975年ボストン録音

 6 サンソン・フランソワ(ピアノ)
   EMI TOCE-6643 1966年録音

 7 小澤征爾/水戸室内管弦楽団 フィリップス PHCP-1500
   1995年6月水戸録音

 8 パスカル・ロジェ(ピアノ) ロンドン POCL-3626-7
   1974年1月録音

 9 富田勲(シンセサイザ) RCA RVC-2250
   録音場所年月記載なし

10 ラリュー(フルート)/霧生トシ子
   デンオン OX-7162-ND(LP) 1978年9月東京録音

11 エレン・セィエルステット・ベトカー(ハープ)/ヴェ
   ルタヴォ弦楽四重奏団
   2000年1月ノルウェー録音 NAXOS 8.555328

 この曲に関しては、どの録音も甲乙付け難く、どれか1枚を
選ぶのは難しいようです。あえて選べば、1のパイヤールと6
のフランソワのピアノ版でしょうか。どちらかというと、私は
ピアノによる演奏の方が好きです。