武満徹　「未来への遺産」への音楽

　この曲は、だいぶ前にＮＨＫ放送開始５０周年記念番組として企画・制作された特集番組「未
来への遺産」のテーマと挿入曲です。この番組は、世界各地の遺跡をテーマを決めて紹介するも
ので、当時のＮＨＫとしてはかつてないほどの大規模な取材だったようです。

　ＣＤに納められているのは、次の１８曲です（最後に別テイクと思われるテーマがまた入って
いるので、全１９トラックということになります）。
　　１　テーマ
　　２　密度を求めて（コナクラ寺院）
　　３　聖なるかたち（縄文土器）
　　４　心の中の宇宙（シュメール）
　　５　太陽神殿（マヤ）
　　６　失われた時への旅（サントリーニ島の幻影）
　　７　天は語らず、大地をして語らしむ（ウル）
　　８　天は語らず、廃墟をして語らしむ（バビロンの獅子）
　　９　ファラオの宝庫（ぺトラ）
　１０　シルクロード（パラミュラ）
　１１　メソポタミアの砂漠（ウルク）
　１２　巡礼の道（レオンの大聖堂）
　１３　この沈黙の遺跡（トゥルム）
　１４　有給の流れ（美しいナイルの日没）
　１５　迷宮と呪文（ケルト）
　１６　王のモスク（イスファハン）
　１７　曼陀羅（根本中堂）
　１８　陶磁の道（日本・中国）

　どの曲も１〜３分程度の短いものばかりですが、「遺跡」の雰囲気をよく表現していたと思いま
す。特に、打楽器を効果的に使ったテーマ曲は、廃墟に残る人間の情念を表現したような独特の雰
囲気のある曲で、非常に聞きごたえのあるものでした。

　この曲の録音は、ただ１種のみ存在しています。ＮＨＫから出ているもので、かつてＴＶ番組
終了直後にＬＰとしてリリースされ、後にＣＤとして発売されましたが、現在は入手困難かもし
れません。

　岩城宏之／ＮＨＫ交響楽団（テーマのみ）、三石精一／ムジカ・ヴィヴァ
　DG POCG-3650　１９７４年３月〜１９７５年１２月録音