ベートーヴェン 交響曲第5番ハ短調 作品67


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 この曲は、ベートーヴェンの交響曲、いや全作品、いや全クラシック音楽作品の中でも最も
よく知られているものと言っても差し支えないと思います。特に、冒頭のあの「戸を叩く」動
機は、おそらく聴いたことのない人はいないのではないでしょうか。
 さて、この第5番ハ短調は、第3番「エロイカ」が完成された1804年頃から構想され始
めているそうです。しかし、ベートーヴェン自身のプライベートな問題(例によって恋愛騒ぎ
です)などがあって、この曲の完成は後回しになり、今日第4番として知られている変ロ長調
の交響曲の方が先に完成しました(1806年)。で、第5番の方には、1807年になって
ようやく本格的に取り組み始めたようです。このころのベートーヴェンは、失恋ばかりではな
く、聴覚の悪化にも悩まされていました。この後生涯にわたってベートーヴェンが戦わなけれ
ばならない、あの業病がこの頃深刻になっていたのです。つまり、この曲はその様な精神的に
も肉体的にも最悪の状態の中で完成されたと言えます。それだけに「苦悩を経て歓喜に至る」
という、ベートーヴェンの生き方が鮮明に感じられます。
 全体は次のような4楽章で構成されています。
   1楽章  アレグロ・コン・ブリオ  ハ短調 4分の2拍子 ソナタ形式
   2楽章  アンダンテ・コン・モート 変イ長調 8分の3拍子 変奏曲形式
   3楽章  スケルツォ アレグロ ハ短調 4分の3拍子 三部形式
   4楽章  アレグロ ハ長調 4分の4拍子 ソナタ形式
 ハ短調という調性は、ベートーヴェンにとって特別なものだったらしく、(悲)劇的な思い
のこもった作品によ良く用いられています。モーツァルトのト短調も同様ですね。

 この曲の録音で所有しているものは次の通りです。

  1 カルロス・クライバー/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
      DG POCG-9526  1975年11月ウィーン録音

  2 ジョージ・セル/クリーブランド管弦楽団
      ソニー SBK 47 651  1963年11月クリーブランド録音

  3 小澤征爾/ボストン交響楽団
      テラーク CD-80060  1981年1月ボストン録音

  4 オットー・クレンペラー/フィルハーモニア管弦楽団
      FIC ANC-7  1960年録音(録音場所記載無し)

  5 ベルナルト・ハイティンク/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
      フィリップス 420,228-2  1985〜87年アムステルダム録音

  6 フルトベングラー/ウィーンフィル
      Della,Inc. PF-9549  録音年月日および場所記載無し

  7 (pf)カツァリス(リスト編曲ピアノ版)
      テルデック 4509-97954-2  1989年ベルリン録音

  8 カール・ベーム/ウィーンフィルハーモニー管弦楽団
      DG 439 681-2  1970年4月ウィーン録音

  9 ルドルフ・ケンペ/ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
      セラフィム TOCE-7102  1971年12月ミュンヘン録音

 10 サイトウ・キネン・オーケストラ/小澤征爾
      フィリップス UCCP-1047  2000年9月8日長野県松本文化会館録音

 以上のうち、私がおすすめするのは、1のクライバーのものです。定評のある録音ですが、や
はりダイナミックな迫力は他を一歩抜きん出ていると思います。他には、録音の新しい10の小
澤の新盤でしょうか。