ベートーヴェン 交響曲第8番ヘ長調


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 この曲は、1812年の春に着想され、ボヘミアのテープリッツに滞在している時に、大いに筆が進んだ、とい
うことのようです。ちなみにこのテープリッツ滞在中に、史上有名な(?)なゲーテとの会見がありました。さて、
ベートーヴェンはこの後、9月になってから一度ウィーンに戻り、弟ヨハンの結婚問題でリンツに赴いていますが、
交響曲第8番が完成したのはこのリンツ滞在中のことです。自筆の楽譜には「1812年10月、リンツ」と脱稿
の日付が記してあります。もっとも、完全な仕上げはウィーンに戻ってから11月に行われたようです。

 構成は次の通りです。
	第1楽章 アレグロ・ヴィヴァーチェ・エ・コン・ブリオ ヘ長調、4分の3拍子
	 ソナタ形式で、いきなり軽く洒落た感じの第1主題で始まります。
	第2楽章 アレグレット・スケルツァンド 変ロ長調 4分の2拍子
	 この楽章もソナタ形式です。この楽章の主題がメトローノームの発明者とのかかわりで有名です。
	第3楽章 テンポ・ディ・メヌエット ヘ長調 4分の3拍子
	 3部形式です。
	第4楽章 アレグロ・ヴィヴァーチェ ヘ長調 2分の2拍子
	 3つの主題を持ったロンド的な性格を持ったソナタ形式(?)です。

 この曲は、ベートーヴェンの交響曲の中では、最も小規模で「軽い」交響曲ということになっています。しかし、
私の最も頻繁に聞くベートーヴェンの作品のひとつです。確かにこの曲には、第3番のような壮大なスケールも、
第5番のような凝縮されたエネルギーもありませんし、7番のような黄金の秋を思わせるような熱狂もありません。
しかし、それらのいずれにもないものをこの曲は持っていると思います。それは、古典的な明澄さと機知です。特
にメトロノームの発明者(メルツェル)との関わりも有名な第2楽章(アレグレット・スケルツァンド)は、とて
も心が和む音楽です。

 私が現在所有している録音は次の通りです。

    1 カール・ベーム/ウィーンフィルハーモニー管弦楽団
        1972年ウィーン・ムジークフェラインザール録音 DG POCG-2708
    2 クラウディオ・アバド/ウィーンフィルハーモニー管弦楽団
        1987年2月ウィーン・ムジークフェラインザール録音 DG F32G 20202
    3 オットー・クレンペラー/フィルハーモニア管弦楽団
        1958年録音
    4 ベルナルト・ハイティンク/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
        1987年12月アムステルダム録音 フィリップス 420,228-2
    5 ルドルフ・ケンペ/ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
        1971年12月ミュンヘン録音 Seraphim TOCE-7104
    6 ジョージ・セル/クリーヴランド管弦楽団
        1959年10月録音 CBSソニー 13AC206
    7 (リスト編曲ピアノ版)シプリアン・カツァリス(pf)
        1986年ニューヨーク録音 テルデック 4509-97955-2

 さて、お勧めはどれか? ちょっと難しいのですが、透明感のある2のアバド盤にしておきます。また、私のこ
の曲に対するイメージから、7のピアノ版も結構いけます。