ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第28番イ長調op.101


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 このソナタは、私の場合、聴く頻度から言ったら1番かもしれません。おそらくこの曲か、「ヴァルトシュタ
イン」のどちらかが、最もよく聴くベートーヴェンのピアノ・ソナタでしょう。
 この曲は、2楽章以降は中期(ベートーヴェンの夏!)の残照と言ってよいでしょうが、1楽章は完全に後期
のものです。出だしは、イ長調の導音(嬰ト)から始まります。そのため、何か唐突にテーマの途中から始まっ
たような印象を受けますが、曲はそのまま区切りも何もなく、自然にするすると流れていきます。
 この曲の冒頭には、アレグレット・マ・ノン・トロッポという速度指定がありますが、それとともにドイツ語
による表情指定があります。mit der innigsten Empfindung というのがそれです。「最も深い感動を持って」
とでも訳しましょうか。ベートーヴェンは、後期になると、ドイツ語による表情指定を多用するようになります。
ここでは、まさしくその通りの音楽が流れます。陰影深く、全体が静かな声で人生を語っているような趣があり
ます。

 私の所有する録音は次の通りです。

  1 ヴィルヘルム・バックハウス ロンドン F30L-20315 1963年2月録音
  2 ルドルフ・ブーフビンダー TELDEC WPCS-10480 1980−82年録音
  3 マウリツィオ・ポリーニ DG POCG-1198/9 1977年6−7月ミュンヘン録音
  4 フリードリッヒ・グルダ AMADEO  録音年月日記載無し
  5 ヴラディーミル・アシュケナージ ロンドン POCL-5134 1976年4月ロンドン録音

 以上の中では、やはり1のバックハウス盤がお勧めです。この録音は、LPも持っていて、もう30年ほども
聴き続けています。