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この曲は、ベートーヴェンの完成した唯一のヴァイオリン協奏曲で、1806年12月23日、フランツ・クレメントの
独奏によりアン・デア・ウィーン劇場で初演されています。この当時高名だったクレメントというヴァイオリニストの委嘱
によりこの作品が書かれたもののようです。しかし、どうも初演の時の評判はあまり芳しくなかったようです。それまでの
協奏曲とはかなり性格を異にする面があり、当時のオーケストラや独奏者にはかなり難しかったのではないかと思います。
そのためか、この曲は初演以来、長く演奏されず、1844年になってメンデルスゾーン指揮、ヨアヒムの独奏によってよ
うやくその真価が世に認められるようになったそうです。この曲は、現在では結構人気のある曲だと思うのですが、その生
い立ちはさほど幸運ではなかったようです。
この曲の魅力は、のびやかで美しい旋律と、程よい緊張感、それに生き生きとした躍動感だと思います。特に第2楽章の
幸福感とそれに続く第3楽章冒頭の舞い上がってしまいそうに軽やかな躍動感は、他のベートーヴェン作品にはあまりみら
れないものです。
各楽章の概要は次の通りです。
第1楽章 アレグロ・マ・ノン・トロッポ ニ長調 ソナタ形式
第2楽章 ラルゲット ト長調 自由な変奏曲形式、あるいは変奏曲の手法を取り入れた自由な3部形式
第3楽章 アレグロ ニ長調 ロンド形式
この曲の録音で所有しているのは、次の3種類だけです。他のベートーヴェンの作品と比べると、非常に少ない数です。
1 アイザック・スターン/ダニエル・バレンボイム/ニューヨーク・フィルハーモニック
CBS/SONY 22DC 5532 1975年5月16日ニューヨーク録音
2 イツァーク・パールマン/カルロ・マリア・ジュリーニ/フィルハーモニア管弦楽団
EMI CC30-9010 1980年9月14/15日ロンドン録音
3 アイザック・スターン/レナード・バーンスタイン/ニューヨークフィルハーモニック管弦楽団(LP)
CBS/SONY SOCL59 録音場所・年月日記載無し
私がよく聴くのは、2のパールマン盤です。非常にみずみずしく美しい演奏です。ジュリーニ指揮のオーケストラの方も
典雅な雰囲気でパールマンとマッチしていると思います。
なお、この曲には、作曲者自身の編曲によるピアノ版があります。私はこちらも好きでよく聴きます。さすがにピアノ協
奏曲版の録音は少ないようですが、次のものを所有しています。
4 ダニエル・バレンボイム(指揮とピアノ)/イギリス室内管弦楽団
DG POCG-3215 1973年7月ロンドン録音
ご承知のように、ベートーヴェンには5曲のピアノ協奏曲がありますが、この編曲ピアノ協奏曲も含めて6曲といっても
よいほどだと思っています。