ベートーヴェン 弦楽四重奏曲第14番嬰ハ短調 作品131


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 1826年に作曲されました。献呈は陸軍中尉シュトゥッテルハイム男爵です。第16番ヘ長調と
ともに本当に最晩年の作品です。
 ベートーヴェンの主要な創作ジャンルは、交響曲、ピアノ・ソナタ(およびその他のピアノ曲)、
それに弦楽四重奏曲の3つであると言われています。他のジャンルにも傑作はありますが、この3つ
の曲種は、ベートーヴェンのほぼ全生涯を通じて作曲され続けていたことと、他と比べて群を抜いて
傑作が多いことからそういわれているものと思われます。とりわけ弦楽四重奏曲は、あの第9交響曲
以後のベートーヴェンの芸術観を知るほとんど唯一のものと言えます。
 弦楽四重奏曲は、通常4楽章編成ですが、この曲は7楽章からなっています。これだけでも相当に
異例ですが、さらに全楽章は切れ目なく演奏されます。そのため、7楽章とは異なる区切り方をする
学者もいるようです。また、1、3、6楽章は、それぞれ2、4、7楽章の序奏で、全体としては拡
大された4楽章構成と見る考え方もあるようです。いずれにしても、ベートーヴェンは、この曲で新
しい弦楽四重奏の形を試みたわけです。構成は以下のとおりです。

 1楽章 アダージョ・マ・ノン・トロッポ・エ・モルト・エシプレッシーヴォ 嬰ハ短調 二分の二拍子
 2楽章 アレグロ・モルト・ヴィヴァーチェ ニ長調 八分の六拍子
 3楽章 アレグロ・モデラート ー アダージョ ロ短調 四分の四拍子
 4楽章 アンダンテ・マ・ノン・トロッポ・エ・モルト・カンタービレ イ長調 四分の二拍子
 5楽章 プレスト ホ長調 二分の二拍子
 6楽章 アダージョ・クワジ・ウン・ポコ・アンダンテ 嬰ト短調 四分の三拍子
 7楽章 アレグロ 嬰ハ短調 二分の二拍子

 私にとって最も印象的なのは、4楽章で、穏やかな明るさをたたえた表情は、他では得難いもので
す。深刻すぎず、適度な軽さを持った平易な流れは何度聞いても素晴らしいと思います。演奏時間の
長さから言ってもこの曲の中心と言ってよいと思います。また、6楽章は緊張度の高いアダージョで、
歌謡風なところもありますが、少々暗さと重さがあります。ダイナミックな7楽章へと切れ目なく続
くため、対比の妙があります。

 私が所有する録音は次の通りです。

1 ブダペスト弦楽四重奏団 1961年11月20日録音(LP)
    CBSソニー SOCL295

2 ラサール弦楽四重奏団 1975年12月ハノーヴァー録音
    ドイツグラモフォン 431141-2

3 バーンスタイン指揮ウィーンフィルハーモニー管弦楽団(弦楽合奏版) 1977年9月ウィーン録音
    ドイツグラモフォン POCG-1614

4 アルバン・ベルク弦楽四重奏団 1983年6月スイス録音
    EMI TOCE-6002

5 バリリ弦楽四重奏団 1952年ウィーン録音
    ウェストミンスター IWB5021/30

 以上のうち、1、2、4はどれをとってもそれぞれすばらしい演奏だと思いますが、あえて1枚を選
ぶとすれば4のアルバン・ベルクSQ盤でしょうか。バーンスタインの弦楽合奏版は、少々響きが分厚
すぎるところがあるようです。また、5はモノラルということもあり、推奨盤にはしませんが、いわゆ
る「古き良き時代」の響きが好きな人には最適だと思います。