ベートーヴェン 弦楽四重奏曲第15番イ短調 作品132


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 ベートーヴェンは、その生涯に16曲(本来第13番変ロ長調作品130の終楽章であった「大フーガ」作
品133を独立した曲として数えると17曲)の弦楽四重奏曲を残しています。これらは、ベートーヴェンの
3つの創作時期(前期、中期、後期)のいずれにおいても作曲されており、ベートーヴェンにとって極めて重
要な曲種だったことが分かります。特に、後期の弦楽四重奏曲(第12番以降の5曲)は、あの第9交響曲を
完成したあとに書かれたものの中では、ほとんど唯一のまとまった作品でもあり、ベートーヴェンが最晩年に
到達した境地を示すものと言われています。その意味でも極めて重要な作品です。
 この曲は、1825年に作曲されましたが、翌年に作曲された変ロ長調作品130(第13番)や嬰ハ短調
作品131(第14番)よりも出版が遅れました。そのため番号と作曲順は一致していません。5楽章構成で
すが、4楽章は5楽章への序奏とみることもできます。

  1楽章  アッサイ・ソステヌート〜アレグロ イ短調、序奏を持つソナタ形式。
  2楽章  アレグロ・マ・ノン・タント イ長調の三部形式。
  3楽章  モルト・アダージョ  リディア旋法、変奏曲。
  4楽章  ア・ラ・マルチア、アッサイ・ヴィヴァーチェ  イ長調、2部形式。
  5楽章  アレグロ・アパッショナート  イ短調、ロンド形式

 先にも触れた4楽章は、作曲中に病気にかかって中断したあと付け加えられたもので、「リデイア旋法によ
る、病気から回復したものの神に対する聖なる感謝の歌」と記してあります。弦楽四重奏という曲の形式から
来ている部分も多いとは思いますが、第9交響曲からさほど年月が経過したわけでもないのに、こちらは極め
て内省的で純化された音楽になっていると思います。

 私が所有する録音は次の通りです。

1 ブダペスト弦楽四重奏団 1961年11月27日録音(LP)
    CBSソニー SOCL296

2 バリリ四重奏団 1956年12月録音
    ウェストミンスター MYCW-19059

3 スメタナ弦楽四重奏団 1983年12月録音
    デンオン 33CO-1140

4 アルバン・ベルク弦楽四重奏団 1983年12月スイス録音
    EMI TOCE-6003

5 ラサール弦楽四重奏団 1975年ハノーヴァー・ベートーヴェンザール録音
    DG 431141-2(輸入盤)

6 クリーヴランド四重奏団 1995年1月マサチューセッツ録音
    テラーク CD-80427

 推薦盤は、やはり4のアルバン・ベルク盤でしょうか。緊張度が高く、明晰な演奏は他に類を見ないほどです。