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作曲に着手したのは1808年頃と言われていますが、本格的に取りかかったのは1809年
になってからです。
この頃は、ベートーヴェンが生活していたウィーン市にとって、大変な危難が降りかかってい
ました。失地回復をねらったオーストリア皇帝フランツが、ナポレオンに対して叛旗を翻したた
め、フランス対オーストリアの戦争になりました。結局優勢なフランス軍によってウィーンが占
領される、という事態になりました。この占領は10月に締結された講和条約によって終わりま
したが、この間ベートーヴェンは相当にひどい状況に置かれたようです。にもかかわらず、この
曲は、堂々とした力にあふれて入るのは不思議な感じがします。
初演はライプツィヒのゲバントハウスで1811年11月28日に行われています。この時の
ピアノ独奏は、ヨハン・フリードリッヒ・シュナイダーというピアニストが受け持ちましたが、
ベートーヴェンのピアノ協奏曲で、作曲者以外がソリストを努めたのは、これが最初のようです。
ウィーンでの初演は、1812年2月15日、ケルント・ナトゥーア劇場で行われています。こ
の時のソリストは、あのカール・チェルニーでした。
オーケストラの楽器編成は、フルート2,オーボエ2,クラリネット2,ファゴット2,ホル
ン2,トランペット2,ティンパニ、弦五部。
<第1楽章>
アレグロ、変ホ長調、4分の4拍子、協奏風ソナタ形式。冒頭フル・オーケストラによる主和
音の強奏に乗って、ピアノがカデンツァ風のパッセージを演奏します。カデンツァ風と書きまし
たが、本来カデンツァがあるべきところ(1楽章のコーダの直前)にはカデンツァは無く、楽譜
には「カデンツァ無用、そのまま進むこと」と記されているそうです。カデンツァという習慣が、
曲の構成を重んじるベートーヴェンには到底許し難いものだったようです。
<第2楽章>
アダージョ・ウン・ポコ・モッソ、4分の4拍子、自由な変奏曲形式。ベートーヴェンの書い
たアダージョはどれも美しいのですが、これはその中でも代表的なものと言えます。弱音器を付
けた弦楽器によって主題が演奏されますが、ほとんど神秘的でありながらとても暖かい音楽で、
聴いていて気持ちのよい楽章です。
<第3楽章>
ロンド、アレグロ、変ホ長調、8分の6拍子。第2楽章のアダージョがすーっと消えて、いき
なり生き生きとしたロンド主題が現れて、第3楽章の開始です。この部分の断固とした感じは、
ピアノソナタ第21番「ワルトシュタイン」の同じ部分から設けます。あちらはより叙情的なの
に対して、こちらはダイナミックで壮麗な音楽ですが。
この曲の録音で、私が所有しているのは次の通りです。
1 ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、(pf)エドウィン・フィッシャー (LP)
フィルハーモニア管弦楽団 録音データの記載無し エンジェル WF-50008
2 カール・ベーム、(pf)マウリツィオ・ポリーニ、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団
ドイツ・グラモフォン FOOG-27008 1978年5月 ウィーン録音
3 ハンス・シュミット=イッセルシュテット、(pf)ウィルヘルム・バックハウス
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 デッカ 433,891-2 1959年ウィーン録音
4 クルト・ザンデルリンク、(pf)内田光子、バイエルン放送交響楽団
フィリップス PHCP-11139 1998年11月ミュンヘン録音
好きな曲である割りには所有枚数が少ないようです。内田光子盤がお勧めです。がっしりした
構築感と美しいピアノの音色が完全に融合した名演奏であると思います。