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ベートーヴェンの作品は、多彩なジャンルにわたっていますが、交響曲とピアノ・ソ
ナタ、それに弦楽四重奏局が最も重要な分野である、と言われています。それは、この
3つの局種のみが生涯の各時期にわたって作曲されている、ということと、それぞれの
時期において、画期的な試みをしていること、そして何よりも傑作が多い、ということ
からです。もっとも、例えばピアノ・ソナタがベートーヴェンの生涯全般にわたって言
わば分散して作曲されているのとは異なり、ある時期にまとまって創作されていること
が多いようです。これは、ピアノ・ソナタがいつでも一人で演奏できるのに対して、4
人の演奏者をそろえる必要があったからかもしれません。
さて、この曲は、周知のとおり、ウィーン駐在のロシア大使ラズモフスキーの依頼に
よって書かれた作品59の3曲の中の一曲です。完成は1806年です。このラズモフ
スキー(伯爵)という人物は、熱狂的な音楽ファンで、自前の弦楽四重奏団を編成し、
自ら第2ヴァイオリンを担当するほどだったそうです。従って最初から演奏家を想定し
て書かれた、と言っても差し支えないと思います。このラズモフスキー伯爵の四重奏団
はかなりの技量を持っていたに相違なく、それは、これら三曲の「ラズモフスキー四重
奏曲」が、いずれもこれまでの弦楽四重奏の枠から大きく踏み出し、新しい作曲技法を
駆使した大胆な作品になっています。特にこの第7番は、規模が大きく、全額賞がソナ
タ形式になっているなど、構成の面でも密度の高い作品です。
<第1楽章>
アレグロ、ヘ長調、ソナタ形式。400小節を超える長大な楽章で、展開部が特に大
きなものになっています。また、コーダが非常に大きく、まるで独立した部分のように
扱われています。
<第2楽章>
アレグレット・ヴィヴァーチェ・エ・センプレ・スケルツァンド、変ロ長調、ソナタ
形式。スケールの大きなスケルツォで、冒頭にチェロが奏するリズム動機が自由に発展
していきます。初演当時はこの楽章は評判が悪かったそうですが、現在はこの局中でも
最も独創的、とされています。
<第3楽章>
アダージョ・モルト・エ・メスト、ヘ短調、ソナタ形式。「メスト」とは「悲しげに」
ということですが、この気分がどこから来たものかは分かりません。ベートーヴェンの
緩徐楽章の例にたがわず美しい楽章です。最後に第1ヴァイオリンのカデンツァ風の経
過句から、切れ目無く第4楽章へと続きます。
<第4楽章>
アレグロ、ヘ長調、ソナタ形式。ロシア民謡に基づく第1主題で始まります。これは
ベートーヴェンの委嘱者に対する敬意なのでしょうが、もとの民謡はかなり悲しい歌な
のだそうです。
私が所有している録音は次の通りです。
1 ブダペスト弦楽四重奏団 CBSソニー CSCR,8044/6 1959〜61年録音
2 アルバン・ベルク四重奏団 EMI TOCE5998 1979年録音
3 バリリ四重奏団 ウェストミンスター MVCW-19056 1955年録音(モノーラル)
案外持っていませんでした。よく聞いているのは、2のアルバン/ベルク盤です。